◇つるべ式（しき）の井戸（いど）と基本的（きほんてき）に同（おな）じ－－制御盤（せいぎょばん）で指示（しじ）どおり動（うご）く

　高（たか）いビルを移動（いどう）するときに便利（べんり）なエレベーター。時（とき）には事故（じこ）もありますが、現代（げんだい）の私（わたし）たちの生活（せいかつ）には欠（か）かせないものになっています。一見（いっけん）、四角（しかく）い箱（はこ）が上下（じょうげ）しているだけのエレベーター。仕組（しく）みは、どのようになっているのでしょうか。＜銅崎順子＞

　時代劇（じだいげき）で、長屋（ながや）のおかみさんたちが、井戸端會議（いどばたかいぎ）をしている場面（ばめん）。そこにある井戸（いど）をよく見（み）てみましょう。井戸（いど）の上（うえ）の方（ほう）には、滑車（かっしゃ）があり、滑車（かっしゃ）にかかった縄（なわ）の両端（りょうはし）には、木（き）おけ(つるべ）がついています。この木（き）おけを井戸（いど）に投（な）げ入（い）れて、水（みず）をくみ上（あ）げます。エレベーターが上下（じょうげ）する仕組（しく）みはこの井戸（いど）の水（みず）をくみ上（あ）げる仕組（しく）みと基本的（きほんてき）に同（おな）じです。

　◇機械室（きかいしつ）が上部（じょうぶ）にある「つるべ式（しき）」

　エレベーターは、人（ひと）が乗（の）る箱（はこ）(かご）が、決（き）められた通路（つうろ）（昇降路（しょうこうろ））を上下（じょうげ）する乗（の）り物（もの）です。ほとんどが電動（でんどう）モーターで動（うご）き、ロープでつり下（さ）げられる方式（ほうしき）のものが一般的（いっぱんてき）です。ロープは、「巻（ま）き上（あ）げ機（き）」と呼（よ）ばれる滑車（かっしゃ）にかかっていて、一方（いっぽう）にかご、その反対側（はんたいがわ）には「つり合（あ）いオモリ」と呼（よ）ばれる重（おも）りがぶら下（さ）がっています。

　重（おも）りがあることで、モーターの力（ちから）が少（すく）なくて済（す）みます。昇降路（しょうこうろ）の両脇（りょうわき）にはガイドレールがあり、かごがそのレールを滑（すべ）っています。

　エレベーターが上（うえ）に行（い）ったり、三階（かい）に止（と）まったりと、指示（しじ）を受（う）けてきちんと動（うご）くのは、制御盤（せいぎょばん）と呼（よ）ばれるコンピューターが機能（きのう）しているからです。

　この制御盤（せいぎょばん）などの機械（きかい）が建物（たてもの）の上部（じょうぶ）にある機械室（きかいしつ）に収（おさ）まっているのは、つるべ式（しき）と呼（よ）ばれます。オーダー型（がた）とも言（い）い、二十階建（かいだ）て程度（ていど）の大（おお）きなビルで三十人（にん）くらいが乗（の）るものは、このタイプのものが使（つか）われています。エレベーターの三分（ぶん）の一が、建物（たてもの）の上（うえ）に機械室（きかいしつ）があるものです。

　建物（たてもの）の上（うえ）に機械室（きかいしつ）があると、太陽（たいよう）の光（ひかり）をその分（ぶん）、さえぎります。すると隣（となり）のマンションや家（いえ）の人（ひと）の日照権（にっしょうけん）（日當（ひあ）たりを確保（かくほ）する権利（けんり）。マンションを新築（しんちく）する際（さい）に問題（もんだい）となることがあります）を侵害（しんがい）することになります。そのため、機械室（きかいしつ）を無（な）くそうという研究（けんきゅう）が進（すす）みました。

　◇摩擦力（まさつりょく）利用（りよう）したトラクション式（しき）

　二〇〇〇年（ねん）に、トラクション式（しき）と呼（よ）ばれるものが誕生（たんじょう）しました。摩擦力（まさつりょく）を利用（りよう）したもので、建物（たてもの）の上（うえ）に機械室（きかいしつ）はありません。エレベーターの通路（つうろ）である昇降路（しょうこうろ）の壁（かべ）に、これまでより薄（うす）く平（たい）らにした制御盤（せいぎょばん）を収（おさ）めたもので、主（おも）に六～十五人（にん）乗（の）りのエレベーターに利用（りよう）されています。

　トラクション式（しき）はモーターが下（した）にあり、滑車（かっしゃ）が二（ふた）つあって、ロープがかごの下（した）を通（とお）っているのが特徴的（とくちょうてき）です。新（あたら）しいエレベーターの約（やく）七割（わり）が、このトラクション式（しき）のため、標準型（ひょうじゅんがた）とも呼（よ）ばれます。

　エレベーターは機械（きかい）なので、安全（あんぜん）に動（うご）かすためには、定期的（ていきてき）な點検（てんけん）は欠（か）かせません。最新（さいしん）のものは、制御盤（せいぎょばん）が正確（せいかく）に動（うご）いているかどうか、遠隔（えんかく）監視（かんし）システムで點検（てんけん）できるものもあります。また、音（おと）など人（ひと）による點検（てんけん）も大事（だいじ）な要素（ようそ）です。

　◇ミニ知識（ちしき）

　◇安全（あんぜん）対策（たいさく）、幾重（いくえ）にも

　エレベーターのロープが切（き）れてかごが落下（らっか）した、という事故（じこ）は、起（お）きたことはありません。「ロープが切（き）れる」ということは、最悪（さいあく）の事態（じたい）ですが、そのような時（とき）でも、乗（の）っている人（ひと）の命（いのち）が助（たす）かるように、さまざまな安全（あんぜん）対策（たいさく）が施（ほどこ）されています。

　萬一（まんいち）、ロープが切（き）れたとします。はこは、どんどんスピードを上（あ）げて落下（らっか）を始（はじ）めます。通常（つうじょう）よりも速（はや）いスピードになったら、かごの底（そこ）に接（せっ）しているレールに付（つ）いた非常止め(ひじょうど）裝置（そうち）が自動的（じどうてき）に働（はたら）き、強引（ごういん）に止（と）まるようになっています。

　また、下（した）の階（かい）にかごがある時（とき）にひもが切（き）れた場合（ばあい）、非常止め(ひじょうど）裝置（そうち）が働（はたら）くスピードになりません。こんなときは、昇降路（しょうこうろ）の底（そこ）にあるバネ(スプリング）やオイルのバッファーと呼（よ）ばれる緩衝器（かんしょうき）（衝突（しょうとつ）をやわらげる器械（きかい））で受（う）け止（と）めます。

　このように安全（あんぜん）裝置（そうち）は付（つ）いていますが、エレベーターの中（なか）で暴（あば）れてはだめです。安全（あんぜん）裝置（そうち）が動（うご）いて止（と）まってしまうことがあります。正（ただ）しく使（つか）ってこそ、安全（あんぜん）に動（うご）きます。

　◇乗（の）り場（ば）にピタッと止（と）まる仕組（しく）み

　エレベーターの扉（とびら）は、はこに付（つ）いている扉（とびら）と建物（たてもの）本體（ほんたい）の扉（とびら）がいっしょに開（ひら）きます。そのときの床（ゆか）の位置（いち）は同（おな）じで、平（たい）らです。制御盤（せいぎょばん）が、階（かい）と階（かい）の間（あいだ）の距離（きょり）を覚（おぼ）えていて、モーターの回転數（かいてんすう）を計算（けいさん）して、止（と）まります。また、かごの上（うえ）に付（つ）いている位置（いち）検出器（けんしゅつき）で正確（せいかく）な位置（いち）を知（し）ります。しかし、何度（なんど）も動（うご）くと誤差（ごさ）が出（で）るため點検（てんけん）で補正（ほせい）します。

　◇アルキメデスが考案（こうあん）

　エレベーターの原型（げんけい）は、今（いま）から約（やく）２３００年前（ねんまえ）に生（い）きたギリシャの數學者（すうがくしゃ）アルキメデス（紀元前（きげんぜん）２８７～２１２年（ねん）ごろ）が考（かんが）え出（だ）しました。アルキメデスは「円周率（えんしゅうりつ）」や「てこの原理（げんり）」などを発見（はっけん）した人（ひと）です。當時（とうじ）のエレベーターは、人力（じんりき）でした。

　１８５３年（ねん）、落下（らっか）防止（ぼうし）裝置（そうち）付（つ）きのエレベーターが誕生（たんじょう）。１８８９年（ねん）に世界（せかい）で初（はじ）めて「電動式（でんどうしき）エレベーター」が完成（かんせい）しました。

毎日小學生新聞　2006年10月11日
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仕組み／結構，組成
釣瓶（つるべ）／吊桶
井戸（いど）／井
つるべ式の井戸、つるべ井戸／吊桶井
???と基本的に同じ／同???基本相同
欠かす（かかす）／缺少 →生活に欠かすことができない；生活に欠かせない
一見（いっけん）／乍一看，初看
四角い（しかくい）／四角，四方 →四角い箱／方盒
時代劇／歷史劇
おかみさん／女掌柜，老板娘，女主人
井戸端（いどばた）／井邊 →井戸端會議／婦女們在井邊閑聊
きおけ／木水桶
投げる、投げ入れる（なげいれる）
汲み上げる（くみ上げる）→井戸の水をくみ上げる
ロープ／繩索，繩纜
つりさがる（吊り下がる）／懸掛，懸吊
吊り下げる
ぶら下がる、ぶら下げる／懸掛，懸吊
両脇（りょうわき）／兩側
ガイドレール／導軌，護軌
収まる（おさまる）／容納，收納
収める
さえぎる（遮る）／光線を遮る
すると／于是，于是乎
平ら（たいら）／平的【形動】
強引（ごういん）／強行，強制
床（とこ）／床鋪
床（ゆか）／地板
てこ／杠桿